1月04日(日)
~ 長州島・チャンジャオ島 ~
南半球・ニュージーランドで
最も過酷な釣りは?
と釣り人に問えば
誰もが声を震わせながら
こう答えてくるという。
『 ROCK FISHING 』
和名
『 磯 釣 り 』
という事で本日は果敢にも
磯を攻める事にした。
NさんとN婦人と
そして過去にダイワ杯優勝のMさんと
中環埠頭で待ち合わせたのは7:00AM。
此処から、
フェリーに揺られる事約45分前後が経過すると
冬空の太陽が
長州島の全景を照らしだす。
清々しい空気に包まれた海辺の街は
どこか哀愁漂う田舎の漁村の様な影が映っている。
小舟の停船場
磯に上がってからでは身動きが取れない為
全ての準備をこの中継ポイントで
整えておかなければならない。
到着すると同時に
朝一番から唯一営業している
釣具屋に脚を踏み入れ
集魚剤・オキアミ・砂エビなどを買い込み
飲料品・食糧などを購入した。
左N氏(リミテッドプロ赤) 右M氏(DAIWA黒)
N氏婦人、荷物番。
準備が整い、小舟に乗り継いで
本日の磯場を目指す。
潮の満ち引きを見ながら安全なタイミングで
磯に飛び移り、荷物を手早くバケツリレーで渡し
人も道具も皆無事に上がった。
この時に船のおばちゃんが
『 潮次第では迎えに来れるか分からない。
岩が剥き出しになったら
船がつけられるかどうか。。 』
という言葉が聞き取れ
少し心配になったのだが
Mさんが大丈夫だというのと
迎えに来れないなんてことは
無いだろうという気持ちで
左程、気にしてはいなかった。
自由に身動きが取れる場所は横幅15m前後だろうか。
BB-X special MZ
早速、準備に取り掛かる。
先にコマセを撒いておく。
N氏スペシャルブレンド
棚、竿丈1.8
10m弱に合わせ、浮き止め糸を止める。
浮きは視認性の高い棒浮きを使用した。
狙うは
白バラ・南洋・黒・真鯛・
(グレは厳しい)
など
日々、磯師達が狙っている一級魚達だ。
時合いの夕方までは本腰を入れずに適当に流し
15:00前後から、力を入れ始めた。
浮きをBに変えハリスを2.5号にし
全層仕掛けに変更して攻める。
Mさんも頑張っているが
クサフグの猛攻にあっていた。
が、
人の事を言えたもんではない。
私は
極少カサゴ祭りに喘いでいたのだ。
小の極み
少し本格的にやり始めた所で
渡してもらった渡船からMさんに連絡が来た。
その内容は
『 来れない 』 という事だった。
急遽他の船に連絡を試みることになり
Mさんが必死に説得してくれている。
その結果、その船は
『 16:30であれば迎えに来れるらしい 』
ということになり、
一安心できたのだが
『 潮が動き出し、時合いはこれから! 』
という時間には
荷物を片付けなければならくなってしまうので
残念さが極まる。
しかし、迎えに来てくれないと
最悪の事態になりかねないので、
迎えに来てくれるだけでも
ありがたい事と感謝しよう。
『 こうなったら 』
『 残りの数十分にかけるしかない。。。』
余計な動きはせず、微動だにせずに
本気で勝負している最中
『 16:30の船も来れない 』
という事を告げられた。
『 ・・・・・・・・? 』
『 えっっ!!?』
『 来れない!?』
『 な、なんで? 』
『 どうしましょ、帰れない??? 』
M さん 『 此処を歩いて行くしかないです 』
私 『 何処?? を歩きますの?? 』
『 え!?どちらです?横から上から???』
『 見た感じ、どちらも道は無さそうですが。。』
Mさんが再度、知人に電話確認をおこない
上の方から歩いていける
獣道ルートを確認してくれた。
その道で歩くと45分位かかという。。。
『 まじですか。。。 』
『 本当にそこを行くしか方法はないんですね。。。』
覚悟を決め
両手にバッカン、肩にロッドケースを掛け
磯の重量級の荷物を担いで登り始める。
直ぐ様
荷物を持ちながらなんて到底考えられない
無理な難所が待ちかまえていた。
Nさんの後ろ絶壁。落ちたらOUT。
荷物をバケツリレー方式に切り替え、
皆で声を掛けあって上に上に運ぶ。
『 此処、石崩れるよー! 』
『 此処、滑るから気を付けてー!』
慎重に一歩一歩を確認しながら
ロッククライミングを開始する。
上に行けばいくほど
急斜面に乾いた砂が被っており
足が滑ってもっていかれる。
自身が持ちうる最大限の注意を払いながら
落ちない事’ だけを祈り
下を見ないように上だけを見て進んで行く。
高所が苦手な私は登るにつれて
段々と恐怖心が増してしまい、足が震え出していた。
『 Nさーん、大丈夫!?気をつけてよ! 』
這いつくばってこの高さまで無事に上がって来た。
枯れかかった冬草は握っても、
直ぐにもげ剥がれてしまう。
草を掴んで体重を乗せるのは危険なため
岩を掴んで必死に登っていく。
奈落の底は御免だと
全神経を研ぎ澄まし登ってきた結果
何とか頂のてっぺんまで来ることが出来た。
足場が確保でき、一安心。
見てください!この高さ!
さらには相当量の荷物を担いできたんです。
フェルトスパイクに砂が目詰まり、
草を踏んだだけで滑る。
しかし、
絶壁の岩場の箇所でこの靴が無かったら
全員登れなかっただろう。
やはり、磯はフル装備でいかなけば駄目だ。。。
登りきって安心していたのだが
更なる恐怖が続くことになる。
頂から繋がる
傾斜がつき平行でない獣道を
歩かなければならないのだ。
道筋を目視確認できるのだが、
その筋を目で辿っていくと
絶壁沿いに沿って繋がっていたのだ。
30cm、酷い所では20cm
横へ滑ってしまったり
脚を絡ませて転んだりしてしまったら
転落し
『 THE END 』 となってしまうだろう。
なるべく崖と反対側である右側に重心を掛けて
只、歩き続ける。
『 此処、滑るよー!! 』
『 此処、気を付けてー!! 』
と皆慎重に慎重に歩いているのだが
途中、N婦人が
獣道が途切れかかっている傾斜のきつい
砂坂に足をもっていかれ、
滑って転倒してしまい
非情に焦った一面があったものの
何とか無事に助かって良かった。
普段の一歩が百歩以上に感じる
厳しい道ながらも
無事に
足場の最も良い場所まで辿り着き
登頂記念の写真を撮ることが出来るまでの
余裕が出て来た。
* 本当に危ない所は写真撮る余裕がありませんでした *
長州島、最高峰の頂にて一枚 (パシャ!)
そして、又、この写真後ろの獣道を歩いて行き、
今迄歩いて来た道のりをふと
振り返り見てみる。
あそこの下から這いつくばってきたのか。
この景色、登った人にしか見れません。
トレッキングコースの本線に到着し
普通に舗装された道に感謝し
踏みしめては喜びを感じる。
あの端から、生還したのか!
改め感極まって暫く皆で眺めていると
心配になったのか?
当初乗ってきた渡船が磯場付近に来て
徘徊しながら
我々を探している様子が
見受けられるではありませんか!!!
『 今更、何なんだ! 』
『 何やってるんだよ!
こっちは危うく死ぬとこだったよ!! 』
と文句を言ってみたのだが
声など届く筈もない距離であった為
無駄な体力を浪費しないよう
静かにその船が行くのを眺めていた。
重点的に探してくれている感じが見て取れたので
本当に心配してくれていたのであろう、
同時にその場所に人影が無いことに
さぞかし驚いていただろう。
一時の休憩を終え
この階段を登って来たのだが
ここに来て急に
脇腹筋がつりそうになり、
かなり痛みだした。
それは
張りつめていた筋肉達が
安堵感で満たされ一気に緩んだ
瞬間であった。
そして、私は心の中でこう呟いた。
『 いいよ、今だったらどれだけつって痛んでも 』
もう、後は何ていう事は無い。
荷物は重いが
舗装された道筋を下って行けばいいだけだから。
トレッキングロードを軽快に下って行く。
このまま、無事に下山し
人影が多くなってきたのを感じ
更に安心感が増し、腹が減り始めた。
危険な道を歩いてくることを知っていた
MさんとNさんの友達のFさんが
迎えに来てくれており
合流してレストランに入り
ビールを頼む。
乾杯の掛け声は言わずとも皆同じだ。
『 皆無事でよかったよ!
生還に乾杯! 』
最初に “ ぐいっ ” といった
一口目の味は
一生涯忘れることが出来ないだろう。
『 荒 磯 』
この釣りこそ
最も過酷な釣りだと言われる由縁が
身に染みて分かった気がした。
当日の釣果 :
坊主
使用タックル :
リール : デスピナ2500・テクニウム等
ライン : セミフロート2号 ハリス1.75 ~ 2号
ロッド : BB-X・ファイアーブロッド・プロテック等
浮き : 黄桜・宮之浦 00、0、B
釣行時状況 :
晴れ・十三夜・満潮20:45・干潮13:50・水温17.4